公開:2020/09/18
更新:2021/02/18
ミスが起こるパターンを見出す
──ミスが起こるのには、ある程度、共通のパターンがある?
あると思います。そのパターンを見出していけるか、がコーチの力だと思います。ゲームの結果を良くするために練習をするのであり、その練習の方向性を見つけるのがコーチの仕事。その意味でも、ゲーム分析は重要です。
今、チームでよく言っているのは「意図あるプレーを組織的にやろう」ということです。これができてないケースは、とても多いと思います。できるようになるためには、まず、自分たちの現在位置を理解すること。そして、問題解決のための方向性と手段をプレーヤー全員が共有できていないといけません。友人から、「今から東京駅に行きたいのだけれど、どうやって行けばいい?」と電話で聞かれたら、「今どこにいるの?」って聞いてから、交通手段を教えます。現在位置を共有するため、そして、ケースバイケースとなる次の展開イメージを共有するために、映像を使います。
I love youの視点
──その他、映像を見る時の視点で、重要なポイントはありますか?
最近強く思うのは、I love youの視点です。このプレーヤーたちが、どうすれば成長できるのか、成功できるのか、という愛情を持った視点で映像を見ないと、見えてこないところがたくさんあると思います。
映像分析の作業自体は機械と向き合って黙々と行うことであり、無機質的です。でもそこに、プレーヤーが成長する糸口を探そうとしているかどうか、この視点があると作業の意味合いとパフォーマンスがまったく違ってくる。ここは大きいのではないかと思っています。
あと、当たり前のことですが、1回見ただけでは気づかないことがたくさんあります。2~3回は見たほうがいいです。
──自チームのビデオ以外に、見たほうがいいものはありますか?
オリンピックの試合です。特に男子。メダルがかかっていない試合でも、めちゃくちゃ面白いです。国の威信をかけて最高のバスケットボールをプレーしようとしているからです。戦術を見ても、プレーヤーの気持ちの入り方とか、すべてが傑出しています。特に、コーチがやろうとしているゲームプラン(ストーリー)に注目してみてください。それが見えるようになると、感性が磨かれて自分で考えることもできるようになります。
1979年、大分県出身。バスケットボール女子日本代表アシスタントコーチ、東京医療保健大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ、東京医療保健大学准教授。2006年、東京医療保健大に女子バスケットボール部を創設し、並行してアナリストやテクニカルスタッフとして女子日本代表チームに関わる。その高い分析力と指導力を生かし、2017年、創部12年目にしてリーグ戦&インカレともに初優勝。2019年まで3連覇中。