現場の声 vol.2:飛龍高等学校原田裕作監督 ~高いレベルで戦うために「フィジカル」は必要~

公開:2020/10/23

更新:2021/03/04

持久力、アジリティは高校生からでも伸ばせる

BJ:入学してくる新入生に対して、ここまでは出来ていてほしいという体力的要素はありますか?

原田:最低限自重でのトレーニングはある程度こなせるようになっていてほしいです。持久力や敏捷性は、正直中学校時代の練習環境も大きいですし、ある程度は高校になってからでも鍛えられる部分なので。新入生に関しては、初めの2カ月はフォームづくりと自重トレーニングを行い、しっかりとできるようになってから次のステップに移るようにしています。選手によっては、3カ月かかる場合もありますが、中学生年代で自重トレーニングがきっちりできる選手は、次のレベルにスムーズに移行できます。

BJ:トレーニングが苦手という選手もいるのではないでしょうか?

原田:確かに苦手意識を持っていたり、きちっとやらない選手も中にはいます。そこは指導者がトレーニングの必要性を言い続けるしかないかなと。あとは、トレーナーやマネージャー、先輩の選手も含めてチーム全体でチェックするようにしています。

BJ:そのほかにトレーニング指導で気を付けていることはありますか?

原田:体が重くなってしまって、ケガに繋がったりキレがなくなってしまったりしては意味がないので、そのあたりに気を使いながらトレーナーとも相談しながら気をつけて指導をしています。ただ、まだまだ改善が必要な部分かなと思います。また、目標体重を設定して毎日体重の管理もしていますが、個人差があるのでそこにはあまりこだわらないようにしています。選手ひとりひとりと相談しながら、成長過程に合わせてトレーニングに取り組むように指導をしています。

戦術・技術だけでは埋まらない差を埋めるのが「フィジカル」

BJ:トレーニングに取り組むことによって選手達にはどのような変化がありますか?

原田:体重でいうと入学時から10kg以上は増えます。多い選手だと20kg以上増える選手もいます。トレーニングは、体つきの変化や体重の変化で成果が分かりやすく、選手たちの自信にも繋がっていると思います。その自信はプレーにも影響していて、格上の相手でも気持ちで負けずに自信をもって戦えるようになっていると感じています。

BJ:トレーニングに取り組むことで、プレーの面でも良い結果を生んでいるのですね。

原田:留学生のいるチームや大学生、社会人のチームと対戦しても、フィジカルでは負けないし、フィジカルがストロングポイントになる場合もあります。そうなると選手は自信をもってプレーできます。格上のチームや身長差のあるチームに対しては、単純に戦術や技術だけでは埋まらない差があると感じています。その差を埋めるためにフィジカルが必要で、そのためにどんなトレーニングが必要なのかを日々トレーナーと相談しながら考えています。

悩んでいるなら専門家に任せた方が良い

BJ:育成年代では、なかなかトレーナーを付けることに対するハードルが高いような気もします

原田:確かに、学校や選手、保護者の理解は必要です。金銭面でのハードルもあるかもしれません。でも、フィジカルに課題を感じている、トレーニングで悩んでいるなら、専門家に任せた方が良いと思います。その方が選手のためにもなりますし、そういう環境を作るのも指導者の役割ではないかと思います。正直、やろうと思えばどんな環境でもできると思います。要は指導者の考え方次第かなと。もちろん指導者自身が勉強することも必要ですが、理論的な背景があり専門的に学んでいる人の方が説得力もありますし、選手も納得してトレーニングに取り組めると思います。コーチ一人では限界があるので、わからないことや自分ではできないことは人に頼る、という考え方も必要だと思います。


取材を終えて・・・

戦術や技術を活かすために「フィジカル」が必要というお話がとても印象的でした。ただ鍛えることが目的ではなく、「どんなプレーをしたいか」「どんなチームを作りたいか」ということを考えながら、専門家と協力してトレーニングに取り組むという考え方は、多くのチームの参考になるのではないでしょうか。今年のチームも180cm台の選手がインサイドでプレーしているそうです。それでも、フィジカルの部分で負けないと自信を持てるのは、日々の積み重ねがあるからこそ。「小さくてもフィジカルでは負けない」飛龍バスケに今後も注目です。

原田 裕作 Yusaku Harada

福岡第一高校、東海大学でプレーし、卒業後アメリカにコーチ留学。帰国後、レノヴァ鹿児島(現鹿児島レブナイズ)のアシスタントコーチを経て、飛龍高校の教員となりバスケットボール監督に就任。2017年にはインターハイ、ウィンターカップでチームをベスト8に導くなど、全国大会でも活躍するチームを作り上げ、今注目をされている若手指導者のひとりである。


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