要素に切り分けて振り返る ~バスケットボールにおける映像分析とは?~

公開:2021/08/25

更新:2021/09/06

2021年8月21日(土)に、セミナー【バスケットボールにおける映像分析とは?~育成年代でも行うべき理由~】を開催。ここでは、そのセミナーの内容から一部を抜粋してレポートします。

今回講師を務めていただいたのは、株式会社SPLYZAバスケットボール分析班の鈴木元気さん。学生時代からアナリストとして活躍され、現在もバスケットボールの指導に携わっておられます。

映像はスポーツにおける答案用紙

鈴木さんがまず語ったのは、「映像と分析」の考え方について。
学生生活では、勉強の成果を学力テストで振り返ります。では、スポーツではどうでしょうか?
練習をしていても、実戦で成果が出なければ意味がありません。また、練習してきたことができなかったとき、その要因を振り返ることができなければ、改善することもできません。
学力テストでは答案用紙を見ながら自身の課題や成果を振り返ることができますが、スポーツには答案用紙がありません。そこで、答案用紙の代わりとなるのが「映像」です。そして、振り返る行為が分析になります。

振り返る際に重要になるのが、「内容を切り分ける」こと。「なんとなく」映像を見ていても意味がありません。チーム・個人の課題や取り組んでいるテーマに合わせて、「要素に分けて」見ることが重要です。
要素に分ける方法としては、<気になるプレーを見る>と<局面で見る>の2つのアプローチがあります。

<気になるプレーを見る>では、「ファストブレイク」「ピックプレー」「カバーディフェンス」など、プレーごとに映像を振り返ります。一方、<局面で見る>では、バスケットボールを要素ごとに分けて見ていきます。

今回のセミナーでは、「オフェンス」の分け方を詳しく解説していただきました。

↑オフェンスを終わり方で分ける

オフェンスの終わり方には、「シュート(Shot)」「ターンオーバー(TO)」「マイボールのリスタート(Throw in)」の3つがあります。この3つの中から、シュートなら「2Pか3P」→「入ったか外れたか」といった具合にさらに細かく分けることができます。さらに、ファストブレイクからの得点か、ペイントエリアの得点か、など切り分け方は目指すチームスタイルや今取り組んでいる課題に応じて千差万別。鈴木さんは「基準をもって切り分ける、観察することが大切」とも語っておられました。

『分析ソフト【SPLYZA Teams】でできることvol.3』の記事内でも

各プレーの奥にある共通部分を見つける

続いて、実際どのように映像分析を行っていくか。その一例を紹介していただきました。今回紹介してもらったのは、ディフェンスの2つのプレーに関する分析です。

↑異なる二つのプレー

↑共通する要素を抽出する

「センターにインサイドで得点されているシーン」と「外から簡単にドライブされているシーン」。一見、全く違うプレーで得点されてしまっているように見えても、注意深く見ていくとある共通点が見えてきます。この例では、「レシーバーに有利なパスが供給されていた」という課題が見えてきました。その原因を探ると「ボールプレッシャーが弱い」という改善点が明確に。そこで、その課題をもとに、練習を組み立ててプレーの改善を図る。これはあくまで一例ですが、このように、映像を繰り返し注意深く見て振り返る(分析する)ことで、「ほんとの課題」を見つけることができます。

※さらに詳しくは『「数字と映像は嘘をつかない」vol.2分析結果を練習に繋ぐ』の記事内でも紹介しています。

↑映像分析のまとめ

その他、映像を選手に見せる時の見せ方やタイミング、映像編集のポイント、撮影の方法など、実際に映像分析を指導に取り入れるためノウハウについても紹介していただきました。そして現場での実践例として今年の2月~3月に実施したセミナーを振り返り(詳細はこちら)もしていただきました。

90名を超える受講者にお集まりいただき、指導の現場において「映像分析」に関する関心が高まっていると実感することができた今回のセミナー。
GIGAスクール構想により、一人一台端末が配布されたり、Wi-Fiの環境も整備されたりと、環境面でも映像活用に対するハードルは下がっているのではないでしょうか。映像分析は「必ず試合に勝てるようになる魔法」ではありませんが、チームや選手の「バスケットボールに対する理解」をお深め、チーム力を高める一つのツールとして、だれでも取り組めるものです。
今回のセミナーの盛り上がりを受けて、「スポーツでは映像を振り返って改善することが当たり前」。そんな時代がすぐにやってくるのではないかと感じました。

映像分析セミナー開催中!

今年の2~3月に実施したオンラインセミナーシリーズ「実践例から学ぶ映像分析の活用法」の第2弾の開催が決定!

今回も、大学・高校・中学校の各カテゴリーを代表する指導者の方々を講師に迎えて、「現場の最前線」でどのように映像分析が活用されているのか。そして、指導者として、どんな部分で「映像分析」を取り入れるメリットを感じているのか。実践例を交えて深く、詳しく語っていただきます!

お申込みはこちらから

あなたの悩みや疑問に、経験豊富な指導者が答えます。
回答は、当サイト内で順次公開。 皆様からのご質問をお待ちしております。
(質問者が中高生の場合は、指導者または保護者のアカウントからご質問を送信してください)