【セミナーレポート】育成年代のコーチング論 後編

公開:2022/01/14

第4回講義テーマ:アルバルク東京アカデミーのプログラム

↑第4回講義のトピック

最終回となった第4回の講義では、アルバルク東京アカデミーでの具体的な取り組みについてお話をいただきました。FIBAのコーチマニュアルに基づいて練習を組み立てているということや、「ドリル」ではなく「ゲーム」になるように工夫をしているということなど、アルバルク東京アカデミーで実際にどのように練習を組み立てて実行しているのか、その詳細を丁寧に解説していただきました。

また、チームのキャプテンを決めないこと、試合には全員出場し、90秒で交代しプレータイムを均等にしていることなど、アルバルク東京アカデミー独自のチーム方針、運営方法についてもご紹介をいただきました。

90秒シフトの方法

戦術的な狙い

90秒シフトのまとめ①

90秒シフトのまとめ②

最後の質疑応答では、具体的な練習のメニューや練習の目的の伝え方、また90秒シフト制について質問があがりました。

Q.『練習のメニューに関して、ドリブル鬼ごっこや4対3のパス回しなど、今回ご紹介いただいたメニューを1年間通して行っているのでしょうか?それとも、時期や試合で出た課題に応じて練習のメニューを変えているのでしょうか?』

A.『練習の中で、フィジカル・デベロップメントに該当する部分のメニューについては、時期や状況に応じて変更することがあります。ただ、モディファイドゲームの部分に当たる、1対1鬼ごっこや4対3パッシングゲームについては、それに取り組むことでバスケットボールの能力が高まるようにゲーム性を持たせて設計しているので、ほとんど変更することはありません。』

Q.『先日アルバルク東京ユースチームの試合を拝見しました。後半になって、90秒シフトを導入しているアルバルク東京さんはスピード感があって、そこに相手がついてこれていない印象でした。90秒シフトを導入することで速いバスケットを実現するということがあるとはあるかと思いますが、ここから塩野さんがどのようなバスケットを目指しているのか、どんなゴールを目指しているのかを教えていただけると嬉しいです。』

A.『ユースチームを設立した当初からか、「早く・速く」「賢く」「協力して」という3点を目指して、選手とも共有しながら取り組んでいます。90秒シフトを導入しているのも、「とにかく早く(速く)する」というところにこだわっているからこそです。
賢くの部分では、“残り時間と自チームのポゼッション数の関係”や、“次のQがどちらから始まるか”“効率の良いシュートはどこから打つシュートなのか”など、状況を見て緻密に計算してプレーできることを求めているということを、子どもたちに伝えています。バスケットボールは、個々の能力では勝てない相手でも、チームで協力すれば勝てるスポーツで、そこが競技としての魅力だと思います。それをシステム化するのではなく、選手が変幻自在にその場の状況に応じてプレーすることが本当のチームワークだと考えていますし、それを実現できるチームを目指しています。

Q.『4対3パッシングゲームを紹介していただきましたが、4対3でやる目的はどこにありますか?また、練習の意図や目的、狙いを選手に伝える際にどのように伝えているのでしょうか?』

A.『目的や方針を選手に伝えるという点では、理想的には「伝えなくて良いようにゲームを設計する」ということを意識しています。今回紹介した、4対3パッシングゲームでは、限られた時間の中たくさんパスをすることが必要なメニューで、スピード(制限時間がある)と安全性(ディフェンスにボールを取られてはいけない)という要素を組み込んでいます。これは、バスケットボールのゲームで起こる要素そのもので、この練習に取り組むことで、自然と試合で必要になるフットワークや判断が出るようになります。試合で必要な技術やスキルが身に付くように、自然と導かれていくという設計にすることが重要です。
4対3にしている理由としては、難易度の調整のためです。イーブンナンバーだと、小中学生では身体能力がモノを言ってしまうため、楽しめない選手が出てきます。アウトナンバーにすることで、どこにパスすべきか、どこに動くべきかを分かりやすくなるとということもありますし、参加する子どもたちが全員楽しめるという点からも、アウトナンバーを活用するということが重要だと思います。小学校低学年であれば、3対1や4対2で行っても良いかと思いますし、高校生年代であればイーブンナンバー、あるいはディフェンスが多い状況で行うということもあっても良いかと思います。

全4回に渡って実施した、「育成年代のコーチング論」セミナー。

現代のバスケットではなく、10年後・20年後のバスケットボールを想像しながら選手に指導をしていく。今までの常識にとらわれず、「選手たちが将来活躍するためにはどうすれば良いか」を常に追求する。

今回のセミナーを通して、アルバルク東京アカデミー、そして塩野竜太コーチの目指す「新たな指導のかたち」を学ぶことができたのではないでしょうか。
コーチングに正解はありません。指導者自身が常に情報をアップデートしながら、目の前の選手たちに真剣に向き合う。それこそが、育成年代におけるコーチングの最大のポイントではないかと感じました。

第1回、2回講義のレポートはこちらから

講義の内容に関しては、

【撮影レポート】子供に教えるとはどういうことか~育成年代のコーチング論~

こちらの記事の中でも触れておりますので、併せてご覧ください!

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